届かないから美しい まるで砂糖玉の月

詩の真髄

届かないから美しい

まるで砂糖玉の月

『砂糖玉の月』

TVアニメ『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』のエンディングテーマとしてやなぎなぎが歌った『砂糖玉の月』その1番サビの冒頭フレーズです。歌詞はやなぎなぎ本人によるもので、10代の頃から『キノの旅』のファンだった彼女は、あえて同書を読み返さずに、自分の中の思い出を辿ってこの歌詞を書いたとのこと。

記憶の原風景を検索させる

ここまで、過不足なく磨き上げられた歌詞があるか?因果関係は支離滅裂で、主語も目的語もない。それでも伝わってくる。なぜか。このフレーズは、僕たちがこれまでに蓄積してきた、あらゆる物語の記憶を利用してメッセージを届けているからだと思います。

僕たちはこれまでに「届かないから美しいもの」をたくさん見てきたし、経験してきた。原風景に「届かないから美しい」ものを持っている人は少なくなく、「届かないから美しい」というフレーズは、まるで僕たちの記憶をグーグル検索するように、その原風景を切り取って、切なさだけを呼んでくる。主語も目的語もないからこそ、この記憶の検索は邪魔されない。

メッセージの核は言葉にしていないのに、その他の言葉の余波だけで、メッセージの内容を伝える。詩といえるものの真髄の一種に、この歌詞は到達していると、本気で思っています。

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